魔法使いの交響曲

魔法使いの交響曲

エピローグ 緋色

 そっと受話器を降ろして、ほうと息を吐く。  そうしてすぐに頭を切り替えて、透明な扉を押し開く。  とある大学の前の電話ボックスから出てきたのは、腰まで届く髪を背中に流した、金色の瞳の、背の高い青年。暑くなり始めたにもかかわら...
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第17話 希望

 部活の他の友人たちはすでに集まっていた。残る一名とは連絡がつかないままである。  スマートフォンに何度連絡を入れても、「現在電波が届かないところにいるか、電源を切っているため、かかりません」の一点張り。メールの返信もなし。 ...
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第16話 勇気

「ナマエってなあに?」  亨の問いかけに、見えない友人は不思議そうに問い返した。  亨は少し考えて、「君は人からなんて呼ばれているの?」ともう一度訊ねた。 「君」 「それは名前じゃないよ。もしかして、名前がないの…...
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第15話 死神

 白い死神のような男の攻撃を躱しながら、美雪は自分の攻撃が当たらないことに焦っていた。  全方向からの攻撃は功を奏さず、あっさりと受け止められた。  それに対応して美雪はすぐに頭を切り替え、自分の血から煉り固めた螺子に、新しく...
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第14話 未練

 十六年前。長谷川邦彦は、SLWが発足する少し前から、当時は異能者研究の聖地と言われた、ドイツの片田舎のとある研究室に留学していた。  彼の指導者として指名されたのは、サリヴァン博士を始めとして変わり者と評される人間が多かった研究室...
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第13話 分身

 逃げてきたままの検査着から地味な夏用の長袖服に着替えて出てきた亨に、正はキッチンから、「サイズ合ってるかー?」と気の抜けるような声で訊ねた。  亨も「うーん」と、実家で過ごすのと同じ調子で答える。 「靴ある?」 「ああ...
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第12話 緊急

 昼休み、風音の制服の胸ポケットの中から、ブブブと、スマートフォンが震える音が響いた。 「風音、メール? 電話?」 「電話。……ちょっと出てくるね」  風音は発信者を確認すると、談笑している友人たちから離れて、人気のない...
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第11話 白銀

 時は、佐倉亨誘拐事件から、一ヶ月ほど遡る。  佐倉正は、地下三階でエレベーターを降りると、スーツの襟を正した。  ここは、一般の社員は立ち入ることを許されない聖域である。 (オレ、なんかヘマしたっけ……?)  急...
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第10話 紫陽

 二日ぶりに登校した風音に、友人は待っていましたとばかりに駆け寄った。 「風音、また体調崩したんだって? 大丈夫?」 「うん、今回のは軽かったみたい」  風音はにっこりと微笑んで答える。  №1の指示に従って任務に...
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第9話 勉強

   退院した亨には、気づいたことがあった。  あやのが不自然に、護がいなくなったことについて触れないのである。  どこかに仕舞われてしまった護の茶碗やコップ。  亨の目の届かないところに移動されたアルバム。 ...
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